一年前に納品したサービスのその後
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受注
一年前。初めて受けた仕事だった。
『こういうサービスを作りたいんだよね。2ヶ月くらいで。15万でお願いできないかな。』
画面数を見積もったが30画面くらいだと思った。この見積もりは結果的には当たっていた。この内容で15万は安過ぎるのはわかっていたし、いまなら他をあたってくれと言い切るだろう。
しかし当時は開業したてで仕事がなく、安くても仕事を受けたい。何もしていないよりはマシだ。という気持ちだった。気づけばろくに開発費の交渉もせず、先方が提示する条件のまま受注してしまっていた。
開発
プロジェクトは炎上した。連日深夜まで作業する日が続いた。それでも2ヶ月では終わらず、最終的には4ヶ月もの間このプロジェクトに関わることになった。
日々追加/変更される仕様。指定された決済サービスは application/csv ベースの謎API。成功したのかどうかすらパッと見ただけではわからない。エラーコードは来ているのか。エラーコードはどれだ。左から何番目だ。エラーコードはこれか。それで、このエラーコードの原因はなんなんだ。なに、ドキュメントがないだと。じゃあエラーの原因はわからないのか。ではサポートに問い合わせよう。返事が来た。よし、この資料さえあればおk・・・サポートよ、これではない。欲しているのはエラーコードとその原因がわかる一覧なのだ。
そんな無駄ともいえる時間がずっと続いていた。
お願いだから WebPay 使わせてくれ。何度かお願いしたがこれだけは覆らなかった。癒着でもあったのだろうか。
決済サービスに苦しめられつつも、粛々と実装を進めた。
リリース
試験もそこそこに、なんとか開発を終えてリリースとなった。
そして運よく運用契約を結ぶことができた。毎月数件の不具合を改修していけば、少額ではあるが安定して運用費をいただけるという内容だ。追加機能となったら別途開発費をいただける。
苦労した甲斐があった。心からそう思った。
運用
検出される不具合を修正する日々が続いた。
2ヶ月後のある日、予想だにしなかった事件が起きた。前触れもなく突然運用契約を解除されたのだ。
どうやら新しい開発者を見つけたらしい。運用契約はそちらの方と結ぶということだった。なんて日だ。
しぶしぶドキュメントとソースコードを提出し、その月で契約は終了となった。無念だった。
一年後
あれからいろんなお仕事をいただけるようになり、事業も軌道に乗ってきた。ありがたいことだ。
先日初めての確定申告を終え、お昼を食べていたらふとあのプロジェクトのことを思い出した。いまどうなってるんだろう。そう思い、iPhone でアクセスしてみた。
すると、驚くことにアクセスができなくなっていたのだ。どうやらSSL証明書の期限が切れているらしい。
証明書の更新忘れちゃったのかな。そう思い SSL の警告を無視して強引にアクセスしてみた。
・・・なんてこった。
自分がリリースしたときと全く同じ景色が広がっていた。ほぼ初期データのみでユーザーが増えた形跡がない。新しい機能が追加されたわけでもない。不具合もそのままだ。公式アカウントでのツイートすらされていないじゃないか。
サービスは放置され、最低限のメンテナンスもされていない状態だった。こんなことあり得るのか。信じられなかった。
さいごに
なぜこんな結果になってしまったのか、理由はわからない。だが、あれほどがんばって開発したサービスが放置されるというのは、本当につらいものだ。先輩フリーランスの方々は日々こんな経験をしてるのだろうか。それともレアケースなのか。
いずれにしろ、もう二度とこんな思いをするのはごめんだ。自分ががんばって避けられる類のものではないのかもしれないが、少なくとも自分が納得できるものを作ろう。
そう初心に返らせてくれる出来事であった。